4日の会社行事を無事終え、のどがイガイガな月曜日を迎えてます。
そんなやる気のない本日、消してはいけないデータをちょん!と消してしまいました。
別に作り直せばいいけどね・・・面倒だなぁ。
グッコミで載せた、チョロ毛の悲劇
~ 夏休みのトモ ~
黒崎一護は非常に焦っていた。
「ヤバッ・・・・・・このままじゃ終わらねぇ」
書いても書いても終わらぬ課題の山。
一つ目の難関、数学は終わりが見えているが、読書感想文なる強敵がまだ控えている。
今日は八月三十日。夏休み最後の日曜。
当初の予定では、課題は前半に片付け休みを満喫するハズだった・・・のに。
現実は、この体たらく。
「くそっ、何もかも腹黒眼鏡狸が悪いんだッ」
日中夜問わぬ破面の襲撃。
たまの休みは、瀞霊廷のお偉方にこきつかわれ、学生の本分を全うすることは適わなかった。
「留年なんかしたら、奴等のせいだ」
その中には、もちろん護廷の隊長も含まれる。
思い出すだけでも腹立たしい。未成年だと言っているにも係わらず、酒盛りに強制参加させられた回数――裕に二十回以上。
先に酔っ払ったモン勝ちとばかりに、ありえないピッチで盃を空けては絡んでくる大人たち。あんな大人には決してなるまいと、心に固く誓ったのも記憶に新しい。
叫び出したい衝動を、ご近所への迷惑を考慮し我慢、怒りをぶつけるようにペンを走らせた。
「あぁッ、くそ!間違えた」
簡単な公式を間違えては、八つ当たりとばかりにゴシゴシと乱暴なまでに消しゴムをかける。
力の加減を間違えたそれで、ノートが破れ一護の苛々は募った。
「ダァーッ!終わらねぇッ」
ペンと消しゴムを放り投げ、机に突っ伏す。
コチコチ、と時計の音ばかりが異様に響く部屋。
そういえば、今日は一度も虚が出現していない。こんな平和な時間がもっと続けばいいのにと思う。
「課題でひぃひぃ言ってんのも俺ぐらいだろうな」
石田はもちろんのこと、織姫やチャドも要領よく課題を片付けているに違いない。
「写させてもらうつうのもなぁ・・・・・・読書感想文ばっかは無理だろ」
今回の課題図書を指で弄り嘆息する。
「・・・・・・大人として失格な奴等ばっかだったから、これもあんま読みたくねぇ」
本を指で弾き深くと息する。普段であればちょちょいと出来ることも、連日連夜の疲労のせいか一つの動作さえ鈍く重い。
「誰か手伝ってくれ~」
泣き言を言うつもりは毛頭ないが、つい心の奥底から零すと、一陣の風が一護の頬を撫でた。
「いい月夜だね、黒崎一護君」
いつの間に現われたのか、死神とは正反対の白い服を纏った男が窓枠に浅く腰掛けていた。
「あ、あ・・・い・・・藍染」
「焦燥を浮かべた表情も素敵だね」
薔薇でも投げて寄越しそうな風情の悪の親玉が、口元に薄っすらと笑みを刷き一護を見詰めていた。
「藍染!アンタ、いいところに来た!暇か?暇だろ?暇だよな!手伝え」
想像とは違う一護の歓迎ぶりに、少しだけ藍染の双眸が見開かれた。
「手伝えつうか、アンタの所為でもあるんだから手伝うのが当たり前、つうこった」
一原因なのだから、遠慮なんぞする必要など欠片もない。
「コレ、あんたの担当な」
藍染の腕を掴み部屋の中まで招き入れ、床へと座らせる。次いで課題図書を藍染の胸へと押し付けた。
「軽く読んでから、感想書いといて。丸写しだけはダメだかんな」
よろしく、と増えた人手に俄然やる気も出てくるというものだ。
さてと気を取り直して数学に取り掛かるか!と放り出したペンを握り参考書へと向き直った。
カリカリカリ――。
室内には、ペンの走る音だけが響く。
カリカリカリ・・・・・・。
どうやら聞き間違いではなさそうだ。
一向にページを捲る音が聞えてこない。訝しく思い、そっと背後で床に座る藍染を盗み見ると、何を考えているのか当の本人は、ベッドへと寄りかかり寛いだ体勢。
「ッ!藍染!アンタ、何寛いでやがる。寛いでる暇があったらコレ読んだら原稿用紙に感想書けって言ったろ!」
傍に寄り、床に放り出された本と原稿用紙を突き出す。
「・・・・・・こんな下らないもの、何故私が読まなくてはいけないんだい?説明してもらえるかな」
「そんなの簡単だろ。アンタの所為で俺は非常に苦労と迷惑を被ってる。少しぐらい俺を労わってもいいんじゃねぇの。むしろ労われ」
ほらよ、と再度本を突き出せば、クスっと藍染が小さく笑った。
「生憎、専門書以外読んだことがなくてねぇ」
「なら、いい機会だ。知らない分野と触れ合うのも知識が広がっていいんじゃねぇの?特にアンタは知識が偏ってんだからよ」
厭味たっぷりに言葉を紡ぐと、ヒクリと藍染の唇が引き攣った。
「・・・・・・いいだろう。貸してごらん」
引っ手繰るように本を奪い、速読かと見まごうばかりの速さで本を読み進めていく。
ものの十数分で一冊を読み終わった男は、ペンをとり原稿用紙へと向き合う。そして一行目に・・・・・
『こんな下らないものに、書くべき感想などない』
「これでいいのかな、一護君」
差し出された原稿用紙を受け取り、一護は光り輝かんばかりの満面の笑みを浮かべた。
一護をよく知るものであれば、裸足で逃げ出す嵐の前兆だったが、幸か不幸か藍染と一護の付き合いは短い。
一護の笑顔に気を良くした藍染が
「こんな下らないものを読まなければならないとは、現世の学生というのは大変だね。私の元へ来ればもっと有意義に過ごせるというのに」
つらつらと言葉を紡ぐ。
「藍染さん・・・・・・」
「ん、何かな一護君」
立ち上がった一護を見上げる藍染の笑みはそのまま凍りついた。
「オッサン・・・・・・感想文ってのはさ、どんなに下らないモンであろうと書かなきゃなんねぇんだよ。それを一行で済ます?現世の常識どころか、人としての常識に欠けてんじゃねぇの?この似非紳士」
グイッ、と額から垂れ下がる一房の髪を握り力のままに引き上げる。
余りの痛さに身動き一つ取れない藍染を、見下ろし猫撫で声で耳元に囁いた。
「原稿用紙は最低四枚。コレの意味判るか、藍染さんよぉ」
「ははは・・・・・・もちろんだよ」
「ならもう一度、挑戦すっか」
「だがね一護君、私の頭は君への愛を囁くか、悪巧みをするか、それ以外には使うつもりはないんだよ」
残念、と肩を竦めてみせると一護の笑みが更に深くなった。
「俺は今、愛を囁くクズよりも感想文が書けるヤツの方が必要なんだよ。ゴタゴタ言ってっと、このチョロ毛引っこ抜くぞ」
力任せに引っ張られ、ブチッと何本かが一護の指へと絡まりそのまま頭皮から離れていった。
「冗談じゃねぇかんな」
「・・・・・・あぁ、ちゃんと理解したよ。それなら適任を呼ぶのはどうだい?」
「適任?」
「そう瀞霊廷通信元編集長に頼むのはどうかな?」
名案だろ?と笑顔を貼り付けているが、青褪めた顔が何とも不憫でならない。
「ん、じゃ呼べよ」
藍染のチョロ毛を握ったまま、高圧的に言い放つ。
藍染が懐から携帯を取り出し連絡をしてから数分後、盲目の元隊長が黒腔から姿を現した。
「やぁ要、待っていたよ」
怯えた様子で手を上げる上司と、ただならぬ怒気を放つ代行の少年。東仙の何も映さぬ目にも、尋常ならぬ気配だけはヒシヒシと感じ取れた。
「この本を読んで感想なるものを書いてくれるかな?出来るだけ叙情的且つドラマチックに頼む」
「・・・・・・余計なこと言うなよ。チョロ毛無事じゃすまねぇぞ」
途端に口を噤む上司のあまりの痛々しい姿に、東仙は震えながらも頷く。
「んじゃ、宜しくお願いします」
行儀良くお辞儀をする一護の手が、藍染から離れるとハラハラと数十本の髪の毛が床へと舞い降りた。
夜明けまであと数時間。
一護の後では、額を付き合わせる大人。
「終った~!そっちは」
振り返ると、タイミング良くソチラも終ったようだ。
「これでいいのかな?黒崎君」
東仙に差し出された原稿用紙はみっちりと文字で埋め尽くされていた。
「マジ、助かった!ありがと、東仙さん」
「・・・・・・この題名はとても胸が痛くなるよ」
役立たずな藍染は無視し、疲労が隠せない東仙を虚圏へと送り出す。一人きりとなった部屋で手渡された原稿用紙へと目を走らせた。
「・・・・・・なにこれ」
一拍置いて、一護からは熱の無い声音が漏れた。
「感想つうか、心情つうか・・・・・・後悔してるくらいなら裏切るなよな」
つらつらと書かれた文章は、東仙の胸の裡。
『人間失格・・・これは耳に痛く、心にも突き刺さる言葉だ。己の正義を真っ当するため友を裏切った私は、まさにこの言葉が相応しい』
全く内容など読んでいないと判る感想文に、くらりと目眩と頭痛に襲われる。
「俺からすりゃ、あんた等全員大人失格だよ」
グシャ、原稿用紙を握り潰す一護の手の甲には血管が浮かび上がっていたとか、いないとか。
絶対に、瀞霊廷からの連絡があろうとも、虚が出現しようとも、当分学生の本分を全うしてやる!と堅く心に誓った黒崎一護、夏休み最終日のことだった。
これを抜いたやつを、すぱーく以降で配るデス。
薄いペラペラになるけど、気にしない!

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